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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

遺伝子組換え血液凝固第ⅩⅢ因子製剤「ノボサーティーン」―ノボ ノルディスク ファーマ㈱―

2016年03月29日

MEDICAMENT NEWS 第2226号 3月25日

第XⅢ因子を定期補充

 ノボサーティーン静注用(一般名・カトリデカコグ:遺伝子組換え)は,頭蓋内出血などの重篤な出血をきたすおそれがある希少な出血性疾患・先天性血液凝固第ⅩⅢ因子欠乏症の治療薬である。第ⅩⅢ因子製剤として初めての遺伝子組換え製剤だ。同疾患の95%以上を占めるとされる第ⅩⅢ因子Aサブユニット欠乏の患者に用いる。臨床試験では4週ごとの定期投与で出血傾向を抑制し,用法・用量で定期補充が認められた。副作用は非中和抗体陽性など。


 血液凝固カスケードにおいて第ⅩⅢ因子はフィブリン塊を強固かつ線溶抵抗性にする役割を担う。この因子がなくても止血は完成するが,凝固塊は非常に不安定なものとなり,再出血することがある。

 第ⅩⅢ因子は,血漿中では,酵素活性部位を有するAサブユニットとキャリア蛋白であるBサブユニットが結合した形で存在している。カルシウムの存在下でトロンビンにより活性化されると,Bサブユニットが解離し,Aサブユニットの酵素活性部位が露呈する。

 先天性血液凝固第ⅩⅢ因子欠乏症は第ⅩⅢ因子の量的低下あるいは質的異常によって引き起こされる出血性疾患である。生後数日で見られる臍帯からの出血が特徴で,その後,生涯にわたり皮膚,皮下組織,関節,筋肉に出血を繰り返す。未治療患者の30%は生涯のうちに頭蓋内出血を起こすと報告されている(Anwarら,1999年)。

 罹患率は200万人に1人と推定され,患者の95%以上は第ⅩⅢ因子Aサブユニット欠乏に起因する(Biswasら,2011年)。国内患者数は67例(厚生労働省研究班,2014年)あるいは52例(血液製剤調査機構,2013年)と報告されている。長期間診断されずに,外科手術や反復流産を経験して初めて診断されることもあるという。


 従来,第ⅩⅢ因子製剤としてヒト血漿由来製剤が使用されているが,ノボサーティーンは第ⅩⅢ因子製剤として初めての遺伝子組換え製剤である。同剤は第ⅩⅢ因子Aサブユニット2個からなるホモダイマーで,ヒト内因性第ⅩⅢ因子Aサブユニットと構造的に同一で,同様の薬理作用を示すと期待される。

 海外第Ⅲ相試験は6歳以上の先天性第ⅩⅢ因子Aサブユニット欠乏患者41例を対象に行われ,ノボサーティーンを4週ごとに52週間投与した。主要評価項目は,第ⅩⅢ因子製剤による治療を必要とする平均年間出血率とした。

 その結果,投与期間中,4例に5件の出血が生じた。患者の年齢(平均26.4歳)によって調整した年間出血率の推定値は0.048回/人・年(95%信頼区間:0.009~0.250)であった。

 比較対照として,欧州を中心に行われた後ろ向き調査「F13CD-QUEST」の結果を用いると,第ⅩⅢ因子製剤の定期投与を受けていない患者(n=16)における出血の頻度は2.91回/人・年であった。今回の第Ⅲ相試験における年間出血率の95%信頼区間の上限(0.250)はそれを下回っており,ノボサーティーンの定期的投与が出血傾向を有意に抑制した。

 この試験の延長試験(n=60)は新たな被験者(日本人5例を含む)を加えて行われた。中間解析の結果,患者の平均年齢(31.0歳)で調整した年間出血率の推定値は0.015回/人・年(95%信頼区間:0.003~0.072)であった。日本人集団では,第ⅩⅢ因子製剤による治療を必要とする出血は認められなかった。

 一方,第ⅩⅢ因子製剤による治療を必要とする出血があった7件のうち1件でノボサーティーンが投与され,止血効果は著効であった。

 これらの第Ⅲ相試験で副作用は67例中14例(20.9%)に20件認められた。主なものは非中和抗体陽性4件/4例(発現症例率6.0%),白血球減少症2件/2例(発現症例率3.0%)であった。


 第ⅩⅢ因子製剤の定期投与によって重篤な出血を抑制できることは,20年以上前から報告されているものの,質の高いエビデンスとは言えなかった。ノボサーティーンの第Ⅲ相試験は,外部対照との比較ではあるが,定期投与による出血率の低下を示した初めての臨床的なエビデンスとなる。

 また,同剤は製造工程でヒトまたは動物由来の原材料を使用していないことから,ウイルスやプリオン伝播のリスクを避けることが可能である。患者にとってより安全・安心な凝固因子補充に寄与するものと期待される。

 なお,第ⅩⅢ因子Bサブユニット欠乏患者に同剤を投与すると,キャリア蛋白が欠乏しているので同剤がすぐに体内から消失し,早期に第ⅩⅢ因子活性が低下する可能性がある。


▷効能・効果
先天性血液凝固第ⅩⅢ因子Aサブユニット欠乏患者における出血傾向の抑制

▷用法・用量
本剤を添付の溶解液全量で溶解し,2mL/分を超えない速度で緩徐に静脈内に注射する。体重1kgあたり35国際単位を4週ごとに定期的に投与する。なお,出血時に投与する場合,体重1kgあたり35国際単位を投与することができる。

▷薬価
2,500国際単位1瓶(溶解液付)
3,648,446円

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2226号 3月25日