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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

持続性選択的DPP-4阻害薬「マリゼブ」―MSD㈱―

2016年02月13日

MEDICAMENT NEWS 第2221号 2月5日

2型糖尿病に週1回内服

  マリゼブ錠(一般名・オマリグリプチン)は長時間作用型のDPP-4阻害薬である。特徴的な薬物動態メカニズムを有し,週1回の投与で血糖値をコントロールする。連日投与のDPP-4阻害薬と同様の有効性と忍容性が確認されている。患者の服薬負担の軽減やアドヒアランスの向上,ひいては治療の継続に資すると期待される。副作用は低血糖症など。


 2009年12月に初めてのDPP-4阻害薬シタグリプチンが発売されてから6年あまりが経過した。この間,10種類近くが発売されて急速に浸透し,DPP-4阻害薬が2型糖尿病患者の血糖コントロール改善に寄与していることに異論は少ないだろう。

 実際に糖尿病データマネジメント研究会のデータでは,2型糖尿病患者のHbA1c平均値は,2008年に7.21%であったが2013年には6.96%に低下。合併症予防のための血糖コントロール目標(日本糖尿病学会による)である「7.0%未満」を達成した。
 とはいえ,これはあくまでも平均値。患者の4割以上は7.0%未満を達成しておらず,いまだ改善の余地はある。

 コントロール不良の要因の1つに服薬アドヒアランスがある。服用薬剤数やレジメンの複雑さ,低血糖や体重増加などの副作用が糖尿病治療薬のアドヒアランスに影響していると考えられる。服薬の負担や副作用が少なく,患者の多様なライフスタイルに対応できる薬剤が今なお望まれていると言える。


 シタグリプチンの開発元である米メルク社は,優れたDPP-4阻害活性を有しつつ週1回投与が可能な新薬を探索。血中半減期が82.5時間で,週1回投与で済むマリゼブを創製した。同剤は健康成人において投与7日後もDPP-4阻害率が88%であった。

 長時間作用のメカニズムは次のように推測されている。まず,肝臓で代謝をほとんど受けないこと。未変化体として体内に広く分布するため,腎臓に移行する薬物量が少なく,腎臓での単位時間あたりの濾過量が少ないこと。さらには,原尿中に濾過された未変化体の約60%が尿細管で再吸収され,未変化体として体内で作用することである。


 第Ⅲ相試験は,食事療法・運動療法で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者(n=414)を対象に行われた。無作為に3群に分け,マリゼブ群,プラセボ群,シタグリプチン群とし,24週間(二重盲検期)投与した。

 主要評価項目のHbA1c変化量は,マリセブ群が0.66%低下,プラセボ群が0.13%上昇,シタグリプチン群が0.65%低下で,マリゼブ群がプラセボ群よりも優れていること,シタグリプチン群に対して非劣性であることが確認された。
 副作用発現率は,マリセブ群4.2%,プラセボ群6.1%,シタグリプチン群3.7%だった。

 他の経口糖尿病治療薬(5系統)の単剤投与で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者(n=585)に対するマリゼブの追加投与試験も行われた。24週間(二重盲検期),5系統のいずれの経口薬に併用しても,プラセボを上乗せした群よりも優れた血糖コントロールを示した。
 単剤投与試験,追加投与試験とも,通算52週間(28週間の非盲検期を含む)の長期にわたる良好な血糖コントロールを示した。
 承認時までの臨床試験で副作用は1,084例中73例(6.7%)に認められ,主なものは低血糖症(1.5%),便秘(0.7%)などだった。

 インスリン製剤やSU薬との併用では低血糖のリスクが増加するおそれがある。インスリン製剤やSU薬の減量を考慮する。類薬で報告されている急性膵炎や腸閉塞にも注意が必要である。
 飲み忘れた場合は,気付いた日に飲み,その後はあらかじめ定められた曜日に服用する。ただし,同じ日に2回分を服用しない。
 また,マリゼブは主に腎臓で排泄されるため,腎機能障害の程度を目安に用量を調節する。


 奈良県立医科大学糖尿病学講座の石井均教授は「糖尿病治療薬にはHbA1c低下以外の価値がある」とした上で「マリゼブは,患者さんのQOLを改善するというDPP-4阻害薬の価値を持ちながら,1週間に1回の服薬でよい。多剤併用している患者は,1種類が週1回服用に減っただけでも,残りの日は服用剤数が少なくなるので,喜ばれると思う」と話している。

 一方で,糖尿病治療薬の価値をめぐるトピックスの1つに,心血管アウトカムに及ぼす影響がある。すでにプラセボ対照の大規模臨床試験で心血管イベントリスクの低下を示した薬剤もある。

 マリゼブについては,心血管疾患の既往を有する2型糖尿病患者4,202例を対象とした心血管アウトカム試験が40カ国(日本は含まず)で進行中である。同剤またはプラセボを3年間投与し,両群間で複合心血管イベント(心血管死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中,不安定狭心症による入院)の発生を比較するものだ。2020年12月の終了予定となっている。


▷効能・効果
2型糖尿病

▷用法・用量
通常,成人にはオマリグリプチンとして25mgを1週間に1回経口投与する。

▷薬価
25mg1錠 1,045.10円
12.5mg1錠 559.20円

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2221号 2月5日