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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

抗悪性腫瘍剤「ザノサー」―ノーベルファーマ㈱―

2015年12月04日

神経内分泌腫瘍に殺細胞作用

 ザノサー点滴静注用(一般名・ストレプトゾシン)は膵・消化管神経内分泌腫瘍(膵・消化管NET)の治療剤である。アルキル化薬で,NETの適応を有する唯一の細胞障害性抗がん剤でもある。欧米では以前から用いられてきたが,日本では30年余りのドラッグラグを経て承認された。5日間連続投与法または1週間間隔投与法がある。副作用は血管障害(血管痛)など。

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 NETは神経細胞や内分泌細胞に由来する腫瘍の総称である。肺,膵臓,消化管など,全身の様々な臓器に発生する。人口10万人あたりの有病率は消化管NETが6.42,膵NETは2.69とされる(Itoら,2015年)。

 腫瘍から分泌されるホルモンによって特徴的な症状が発現する機能性腫瘍と,症状のない非機能性腫瘍にも分けられる。機能性腫瘍には,インスリンを分泌するインスリノーマ,グルカゴンを分泌するグルカゴノーマ,ガストリンを分泌するガストリノーマなどがある。

 症状としてインスリノーマなら低血糖症状,グルカゴノーマなら遊走性壊死性紅斑,耐糖能障害・糖尿病,体重減少,貧血など,ガストリノーマなら消化性潰瘍,下痢などが現れる。

 NETは悪性ではあるが,かつては「カルチノイド」と称され,がんよりも予後は良好と見られていた。しかし2000年にWHOの病理組織学的分類でカルチノイドの呼称は使用されなくなり,2010年には悪性と明記された。

 膵・消化管NETの治療は腫瘍細胞の分化度・悪性度によって異なるが,手術可能例に対しては手術が原則である。切除不能例に対しては,腫瘍増殖抑制と機能性腫瘍における内分泌症状の緩和の2つの治療戦略をとる。

 ソマトスタチンアナログのオクトレオチドが腫瘍増殖抑制(徐放性製剤のみ)と症状緩和を目的に用いられる。腫瘍増殖抑制には,細胞増殖などのシグナル伝達を阻害する分子標的薬(エベロリムス,スニチニブ)が承認されているが,適応は膵NETに限られる。また,これまで殺細胞作用を有する薬剤はNETに承認されていなかった。

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 ザノサーは,DNAをアルキル化して鎖間架橋を形成し,DNA合成を阻害することで殺細胞作用を示すと考えられる。米国では1982年に,フランスでは1985年に承認された。米国や欧州のガイドラインには,ドキソルビシンやフルオロウラシルとの併用療法が切除不能な膵・消化管NETの治療選択肢として記載されている。

 しかし,国内では永らく未承認であり,医師の個人輸入によって用いられていた。2005年の「未承認薬使用問題検討会議」で「治験が早急に行われるように検討すべき」との結論に至り,ノーベルファーマが臨床試験を行い,昨年9月に承認を取得した。

 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験は,切除不能または遠隔転移を有するNET患者22例を対象に行われた。ザノサーをDaily投与法(用法・用量参照)またはWeekly投与法(同)で最大4サイクルまで投与した。主要評価項目であるDaily投与群においてPRが1例,病勢安定(SD)が13例で,奏効率は6.7%(1/15例)であった。Weekly投与法では奏効率は16.7%(1/6例)であった。

 副作用は22例中22例(100%)に認められ,主なものは血管障害(血管痛)(59.1%),悪心(45.5%),便秘(45.5%),γ-GTP 増加(31.8%),倦怠感(22.7%),味覚異常(22.7%),尿中ブドウ糖陽性(22.7%)などだった。

 未承認薬時代の多施設レトロスペクティブ研究(単剤または併用)では,切除不能または遠隔転移を有するNET54例(膵NET46例,消化管NET8例)に対して奏効率27.7%(13/47例),無増悪生存期間(PFS)中央値11.8カ月,全生存期間中央値38.7カ月であった(Aokiら,2015年)。

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 この研究に携わった九州大学大学院の伊藤鉄英・准教授(病態制御内科学)は「約3カ月後に転移巣が著明に縮小した患者やdelayed responseを示した患者,PFSを長期間維持した患者など,効き方は様々だった」と経験を語る。その上でザノサーの位置づけについて「手術不能例,術後再発例が対象となる。治験のデータに基づき,まずは単剤で使用するのがよい。消化管NETの中で日本人に多い後腸(結腸・直腸)の腫瘍にも使えると考えられる。制吐剤などの支持療法の進歩で,副作用の管理は容易となっている」と話す。

 日本神経内分泌腫瘍研究会の「膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン2015年(第1版)」では,ザノサーを用いた化学療法が選択肢に盛り込まれている。

 伊藤氏は「ザノサーの2種類の投与法をどう使い分けるか,単剤か併用か,併用なら膵NETと消化管NETのそれぞれでどの薬剤と組み合わせるかなどを今後検討していかねばならない」と指摘している。

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▷効能・効果
膵・消化管神経内分泌腫瘍

▷用法・用量
下記用法・用量のいずれかを選択する。
⑴5日間連日投与法: 通常,成人にはストレプトゾシンとして1回500mg/m2(体表面積)を1日1回5日間連日点滴静脈内投与し,37日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。
⑵1週間間隔投与法: 通常,成人にはストレプトゾシンとして1回1,000mg/m2(体表面積)を1週間ごとに1日1回点滴静脈内投与する。なお,患者の状態により適宜増減するが,1回の投与量は1,500mg/m2(体表面積)を超えないこと。

▷薬価
1g1瓶 42,531円

 

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2214号 11月25日