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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

免疫調整剤「プラケニル」―サノフィ㈱―

2015年12月19日

エリテマトーデスの世界標準薬

 自己免疫疾患である皮膚エリテマトーデス(CLE),全身性エリテマトーデス(SLE)の世界標準薬ヒドロキシクロロキン(HCQ,プラケニル錠)がようやく承認,発売された。同剤は免疫調節作用,抗炎症作用を有し,エリテマトーデスの皮膚症状などを改善する。1⽇1回投与で副作用は下痢など。重大な副作用として網膜症などがあり,眼科医との連携のもとに使用する。

 


 

 SLEは顔面の蝶形紅斑・円板状皮疹などの皮膚症状,発熱,倦怠感,関節痛・筋肉痛,蛋白尿,精神神経症状などの全身症状を呈する。20~40歳代の女性に多く見られ,寛解と再燃を繰り返して慢性に経過することが多い。発症・増悪因子として紫外線曝露,寒冷刺激,ストレスなどが知られる。従来,国内では薬物療法は経口ステロイド薬が中⼼で,NSAIDs,免疫抑制剤なども用いられる。こうした治療で予後は改善しているが,一方で,治療による感染症が問題となる。

 CLEでは病変が皮膚に限局して発現する。ステロイド外用剤や免疫抑制外用剤を中⼼に,治療困難な場合はそれらの経口剤あるいは治らい剤のジアフェニルスルホンが用いられている。

 


 

 HCQは抗炎症作用,免疫調節作用,抗マラリア作用などを有する。その機序として,リソソーム内への蓄積によるpHの変化と,リソソーム内の種々の機能の抑制が関与していると推察される。

 海外のガイドラインや教科書ではSLEの薬物療法の第1選択の1つとされ,皮膚症状,筋骨格系症状,倦怠感の改善,再燃の抑制,感染症のリスク低減,さらには生命予後を改善することが知られている。CLEに対しては,外用剤で効果不十分な場合の選択肢,あるいは重度な病変・広範囲な病変に外用剤と併用する薬剤と位置づけられている。

 しかし,国内では未承認であったため,例えば顔面の皮疹を外用剤でコントロールできない若い女性に,SLEの内臓病変がなくてもステロイドを全身投与せざるを得ない場合があった。一部の施設では医師の個人輸入によってHCQが投与されていたが,標準薬をより多くの患者に使用できるように国内での開発が要望された。

 


 

 第Ⅲ相試験は,活動性皮膚病変を有するCLE患者およびSLE患者を対象に行われた。無作為に2群に分け,プラケニル群またはプラセボ群とした。16週間の二重盲検期の後,36週間全例にプラケニルを投与した。皮膚病変の重症度を全身にわたって評価する「CLASI活動性スコア」の変化を主要評価項目とした。

 その結果,プラケニル群(n=72)は16週後にスコアが4.6ポイント低下しており,ベースラインと比べて有意な変化であった。プラセボ群(n=24)は3.2ポイントの低下で,ベースラインから有意に低下した。なお,この試験でプラセボは参考群の位置づけで,群間の統計的な有意差の検出力はない。

 プラセボ群はプラケニルに切り替え後にさらなるスコアの低下が見られ,32週以降は両群で同程度のスコアの変化となった。
 倦怠感等の全身症状,筋骨格系症状などについても,プラケニル群はおおむねプラセボ群を上回る改善が得られた。
 同剤の副作用は101例中31例(30.7%)に認められ,主なものは下痢(9.9%),頭痛(3.0%),中毒性皮疹(3.0%),蜂巣炎(3.0%)などだった。

 


 

 HCQは海外では60年にわたる使用経験があるが,古くから使われているがゆえに現在の新薬承認基準を満たすエビデンスは存在しなかった。今回の国内第Ⅲ相試験が世界で初めてのエビデンスになるという。

 一方,HCQを含む4-アミノキノリン化合物は網膜毒性を有することが知られている。その1つであるクロロキンは,かつて国内でも使用され網膜症が問題となったことがある。

 HCQはクロロキンの誘導体であるが,脂溶性が低下し,組織に対する親和性がクロロキンと比べて低い。1⽇平均投与量が6.5mg/kg(理想体重)を超えなければ,網膜症を含む眼障害が発現する可能性は低いとされている。その際,実体重ではなく理想体重から投与量を決定するのがポイントである。特に肥満の患者では,実体重に基づいて投与量を設定すると過量投与になる可能性があるからだ。

 また眼障害の早期発見のため,少なくとも1年に1回は眼科検査を施行することが求められ,添付文書にその検査項目も具体的に記載されている。

 重大な副作用の1つとして皮膚粘膜眼症候群などの重症薬疹が発現している。製造販売元のサノフィは,いつもと違う皮膚症状が発現したらすぐに受診するように,医師・薬剤師を通じて患者に注意喚起している。

 


 

▷効能・効果
皮膚エリテマトーデス,全身性エリテマトーデス

▷用法・用量
通常,ヒドロキシクロロキン硫酸塩として200mgまたは400mgを1⽇1回食後に経口投与する。
ただし,1⽇の投与量はブローカ式桂変法により求められる以下(添付文書に記載)の理想体重に基づく用量とする(後略)。

▷薬価
200mg1錠 418.90円

 

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2216号 12月15日