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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

減感作療法薬(アレルゲン免疫療法薬)「アシテア」―塩野義製薬㈱―

2016年03月09日

MEDICAMENT NEWS 第2223号 2月25日

鼻炎のダニ舌下免疫療法

 アシテアダニ舌下錠(成分=ヤケヒョウヒダニエキス原末・コナヒョウヒダニエキス原末)はダニ抗原によるアレルギー性鼻炎に対する減感作療法(アレルゲン免疫療法)薬である。2種類の室内塵ダニから抽出した原末を含有する。1日1回舌下に投与・保持し,薬剤が完全に溶解したら飲み込む。臨床試験ではくしゃみや鼻汁などの鼻症状を改善し,対症療法(レスキュー)薬の使用を減らした。年単位の継続で,治療終了後も効果が持続すると期待される。副作用は咽喉刺激感,口腔浮腫,口腔そう痒感など。講習を受けるなどして登録済みの医師が処方する。


 アレルゲン免疫療法は,アレルゲンを少量から漸増して継続投与することでアレルゲンに対する免疫学的な耐性の増強を獲得することを目的としている。アレルギー性疾患の自然経過を改善させうる唯一の根本治療である。

 千葉大学大学院の岡本美孝教授(耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学)は,かつて同科で治療したアレルギー性鼻炎患者に連絡をとって再度診察したことがある。すると,アレルゲン免疫療法を2年以上施行した成人患者(n=21)は,16年(平均)経過後も約半数で症状が消失していた。軽度改善までを含めると81%に効果が認められた。「従来の薬物療法では得られない効果」と岡本氏は解説する。

 ただ,従来の皮下注射によるアレルゲン免疫療法は,投与時に痛みを生じること,開始当初は頻回の通院が必要なこと,まれにアナフィラキシー等の全身性反応が発現するなどの課題がある。その頻度は0.1~0.2%と報告されている(Rankら,2014年)。

 一方,抗原エキスを舌下粘膜を介して投与する舌下免疫療法は,自宅で痛みなく投与できること,重篤な副作用の発現が皮下注射に比べて少ないといった特徴がある。


 国内第Ⅱ/Ⅲ相試験は,ダニ抗原による通年性アレルギー性鼻炎患者を対象に行われた。無作為に分けてアシテア群,プラセボ群とし,52週間投与した。評価には,鼻症状(くしゃみ発作,鼻汁,鼻閉,鼻内そう痒感)とレスキュー薬(抗ヒスタミン薬,鼻噴霧用ステロイド薬など)の使用状況を考慮した「調整鼻症状スコア」を用いた。

 主要評価項目である投与44~52週後の平均調整鼻症状スコアは,アシテア300単位群(n=315)が4.99,プラセボ群(n=316)が6.13で,アシテア群が有意に優れていた。経時的推移では,投与2カ月後よりアシテア群のプラセボ群に対する有意差が認められ,投与1年後まで継続した。

 症状別の解析でも,すべての鼻症状でプラセボ群との間に有意差が認められた。また,レスキュー薬の使用スコアもアシテア群が有意に少なかった。

 海外第Ⅱ/Ⅲ相試験では,治療終了後の無治療期の評価も行われている。ダニ抗原による通年性アレルギー性鼻炎患者を対象としたもので,アシテア群,プラセボ群に分けて12カ月間投与。その後,無治療期として12カ月間観察した(Bergmannら,2014年)。

 その結果,治療期のみならず,治療期終了10~12カ月後の平均調整鼻症状スコアにおいても,アシテア300単位群(n=132)とプラセボ群(n=137)との間に有意差が認められた。

 両試験でアシテア群の副作用は985例中673例(68.3%)に認められ,主なものは咽喉刺激感(21.0%),口腔浮腫(20.0%),口腔そう痒感(18.3%),耳そう痒感(10.4%)などだった。


 「鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2016年版(改訂第8版)」では,アレルゲン免疫療法は通年性アレルギー性鼻炎の重症度,病型を問わず選択肢の1つとされている。岡本氏は「現状では,アシテアは成人および12歳以上の小児のダニアレルギー性鼻炎患者が適応となる」とした上で,「まずはダニ抗原によるアレルギー性鼻炎と正確に診断する。患者にメリット・デメリットを十分に説明し,同意を得て開始する。その後も詳細に治療経過を評価する。1年間継続した段階で効果が見られなければ,他の治療を検討することも必要だ」と指摘する。65歳以上の高齢者などは慎重に投与を判断することになっている。

 アレルゲン免疫療法は一般的に,効果発現までの期間は約2~3カ月で,治療期間は2~3年以上とされている。治療中もアレルゲン回避などの環境整備は必要である。

 アシテアの臨床試験で副作用の初回発現時期は,投与開始から2週間以内が多かった。特に咽喉刺激感,口腔そう痒感は投与初日に多い傾向が認められた。岡本氏によると,これらは治療の必要はなく,投与を継続するうちに発現しなくなることが多い。舌下免疫療法によるアナフィラキシーは,国内では報告がないが,海外では1億回に1回の頻度で発現すると推定されている(Calderónら,2012年)。岡本氏は「舌下免疫療法は自宅で行うので,患者にも副作用を十分に話しておく必要がある」と指摘している。


▷効能・効果
ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎に対する減感作療法

▷用法・用量
通常,成人および12歳以上の小児には,1回100単位(IR)を1日1回舌下投与から開始し,1回投与量は100単位(IR)ずつ,300単位(IR)まで増量する。なお,漸増期間は,原則として3日間とするが,患者の状態に応じて適宜延長する。舌下投与後は完全に溶解するまで保持した後,飲み込む。その後5分間は,うがいや飲食を控える。

▷薬価
100単位 1錠 67.10円
300単位 1錠 201.20円

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2223号 2月25日