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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

抗ウイルス化学療法剤「ヴィキラックス」―アッヴィ合同会社―

2015年12月28日

C型肝炎「IFNフリー」に新世代

 ヴィキラックス配合錠(一般名・オムビタスビル水和物・パリタプレビル水和物・リトナビル)は,インターフェロン(IFN)を用いずにC型慢性肝炎を治療するIFNフリー療法の「第2世代」(熊田博光・虎の門病院分院長)である。直接作用型抗ウイルス剤(DAAs)の固定用量の配合剤で,1日1回服用する。臨床試験で持続的ウイルス陰性化(SVR)率は約95%,治療期間は12週間である。副作用は末梢性浮腫など。カルシウム拮抗薬やスタチンなどとの薬物相互作用が報告されている。他のIFNフリー療法と同様,アドヒアランスの確保やウイルス排除後の肝発がんスクリーニングが重要となる。

 


 

 2014年9月に初めてのIFNフリー療法(ダクラタスビル+アスナプレビル,DCV/ASV)が実用化された。IFNを含む治療が困難な患者のアンメットニーズを満たし,治療期間も従来の半分の24週間で済むとあって,短期間で浸透した。

 ただ,IFN不適格・不耐容例と前治療無効例を対象とした臨床試験では,両剤を投与する前からC型肝炎ウイルス(HCV)のNS(非構造蛋白)5A領域のアミノ酸配列の変異(Y93H)を有する患者が15%ほどいた。SVR率は全体集団では約85%だが,そうした患者では半減していた。

 熊田氏によると,虎の門病院ではこれまで850例にDCV/ASV療法を施行し,耐性変異のない患者を選べば,臨床試験よりも高い成績が得られたという。特筆すべきは患者の年齢分布で,70歳代が4割,80歳代も1割弱を占めた。全体のうち代償性肝硬変の患者が4割であった。高齢化が進んで発がんリスクが高く,抗ウイルス療法の導入が急がれる国内のC型慢性肝炎の状況を映し出している。

 第2世代のIFNフリー療法剤であるレジパスビル・ソホスブビル配合剤では,治療期間が12週間に短縮し,臨床試験におけるSVR率は100%に上昇。ベースラインでNS5A領域に何らかの変異がある患者でもSVR率は100%であった。

 一方で,同剤は重度の腎機能障害または透析を必要とする腎不全患者には禁忌となっている。抗不整脈薬アミオダロンとの併用で徐脈等の副作用が現れるおそれもある。薬価は12週の治療期間で約670万円である。

 


 

 ヴィキラックスは第2世代の新たな配合剤である。HCVの複製に必須の蛋白であるNS5Aを阻害するオムビタスビルと,NS3/4Aプロテアーゼを阻害するパリタプレビル(PTV),さらにPTVの血中濃度を上昇させるリトナビルを配合した。ヴィキラックスは日本人に多いジェノタイプ1bのHCVに対して強力な阻害作用を有する。糞中排泄であり,腎機能障害の患者でも使用できる。一方,中等度以上の肝機能障害のある患者には禁忌である。また,薬物相互作用が比較的多く報告されていることを念頭に置く必要がある。

 


 

 第Ⅲ相試験はC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変(ジェノタイプ1b)患者363例を対象に行われた。ヴィキラックスを12週間投与し,終了12週後に血中HCV RNA量が定量下限値未満となった患者の割合(SVR12率)を評価した。

 その結果,SVR12率は,未治療患者で94.6%(140/148例),前治療のある患者で93.6%(102/109例)であった(表)。代償性肝硬変患者のSVR12率は90.5%(38/42例)であった。年齢,性別,IFNが効きにくいとされるIL28B遺伝子型,ベースラインのHCV RNA量などの背景因子にかかわらず,良好な有効性が確認された。

 なお,この試験の一部はプラセボ対照無作為化比較試験として行われた。そのプラセボ群(n=106)は12週間の投与終了後に非盲検下でヴィキラックスを12週間投与され,有効性が示された。

 副作用は363例中105例(28.9%)に認められ,末梢性浮腫15例(4.1%),頭痛12例(3.3%),悪心10例(2.8%)などだった。重大な副作用の1つに肝機能障害,肝不全がある。

 


 

 ヴィキラックスの薬価は治療期間合計で約450万円となる。埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科の持田智教授は,IFNフリー療法を「治療期間,耐性変異,肝・腎障害,薬価を踏まえて検討することになる」と話している。

 薬物相互作用については,「抗ウイルス療法の期間は3カ月なので,(カルシウム拮抗薬などは)代替薬を選んでおけば,対応可能ではないか」とする。

 なお,HCVとHIVに重複感染している患者では,ヴィキラックスに含まれるリトナビルによって抗HIV薬への耐性が生じる可能性があるため,HIVのウイルス学的抑制が得られている患者にのみ使用する。

 熊田氏は「ヴィキラックスの発売で,日本のC型肝炎治療は肝炎ウイルス撲滅への最終章に入った」とした上で,「何年か先には,C型肝炎は『幻の病気』になっているだろう」と話している。

 


 

▷効能・効果
セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善

▷用法・用量
通常,成人には1日1回2錠(オムビタスビルとして25mg, パリタプレビルとして150mgおよびリトナビルとして100mg)を食後に経口投与し,投与期間は12週間とする。

▷薬価
1錠 26,801.20円

 

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2217号 12月25日