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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

ヒト型抗ヒトIL-17Aモノクローナル抗体製剤「コセンティクス」―ノバルティスファーマ㈱・マルホ㈱―

2015年10月23日

乾癬の「病態の鍵」を標的に

 

 コセンティクス(一般名・セクキヌマブ;遺伝子組換え)は慢性の皮膚疾患,乾癬(尋常性乾癬,関節症性乾癬)の治療薬である。病態の鍵を握ると見られる炎症性サイトカイン,インターロイキン(IL)-17Aの生物活性を中和する抗体薬(生物学的製剤)だ。
 
 1週ごとに計5回,その後は4週間間隔で皮下投与する。臨床試験では,既存治療で効果不十分な患者の症 状を速やかに改善し,効果は52週にわたって持続した。副作用は鼻咽頭炎,頭痛など。薬理作用から考えられる重篤な感染症の発現などに十分注意する。

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 乾癬は銀白色の鱗屑を伴った紅斑を特徴とする炎症性疾患。皮疹は頭皮,肘頭,膝蓋,爪などに現れ,慢性に経過する。局面型皮疹のみを有する「尋常性乾癬」,皮疹が汎発化した「乾癬性紅皮症」,皮疹と炎症性関節炎を伴う「関節症性乾癬」,発熱とともに無菌性小膿疱が全身に多発する「膿疱性乾癬」などの病型がある。

 一般に,治療は病型や皮疹の重症度・部位,患者の年齢・ニーズに応じて外用薬や光線療法,免疫抑制薬,生物学的製剤を単独あるいは組み合わせて行う。

 2010年に生物学的製剤が乾癬に承認され,紫外線療法を含む既存の全身療法で十分な効果が得られず,皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ患者に用いられるようになった。最初に承認されたのは抗TNF-α抗体,次いで2011年の抗IL-12/23抗体である。いずれも炎症性サイトカインを選択的に阻害し,皮疹の重症度や面積の低減,QOLの改善を示す。

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 コセンティクスは,炎症性サイトカインの中でも乾癬の病態形成の鍵を握ると見られるIL-17Aを標的とした抗体薬である。IL-17Aに結合することでIL-17AのIL-17受容体への結合を阻害し,その生物活性を中和する。

 IL-17Aは角化細胞の活性化,炎症細胞の病変部への誘導などを介して乾癬の病態形成,局所炎症に大きく関与していると考えられる。実際に,乾癬患者の乾癬病変部位ではIL-17Aの濃度が高いことがわかっている。

 国際共同第Ⅲ相試験「ERASURE試験」は,中等症から重症の局面型皮疹を有する乾癬患者737例を対象に日本を含む12カ国で行われた。無作為に3群に分け,同剤300mg群,150mg群,プラセボ群とし,導入期と維持期を合わせて48週時まで投与した。

 皮疹の面積と重症度をスコア化した「PASIスコア」がベースラインからX%以上減少した患者の割合を「PASI(X)反応率」とした。

 主要評価項目の1つである12週時のPASI 75反応率は,300mg群が81.6%,150mg群が71.6%,プラセボ群が4.5%で,実薬群はプラセボ群に比べて有意に優れていた。実薬群の52週時(最終投与から4週後)のPASI 75反応率は300mg群が74.3%,150mg群が60.1%であった。

 PASI 100反応率,すなわち皮疹が消失した患者の割合も,12週時で300mg群28.6%,150mg群12.8%,プラセボ群0.8%と,実薬群が有意に優れた。52週時は300mg群39.2%,150mg群20.2%で継続により高い効果が維持された。

 日本人(n=87)における効果も全体集団と同様であった。
 他の3試験を含めた12週の集計で,コセンティクス群の副作用は1,382例中260例(18.81%)に認められ,主なものは,鼻咽頭炎(2.03%),頭痛(2.03%),下痢(0.80%),上気道感染(0.72%)など。日本人では58例中6例(10.3%)で,鼻咽頭炎(1.7%)などだった。

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 こうした知見から,既存治療で効果不十分な尋常性乾癬患者に対してコセンティクスを生物学的製剤の第1選択とすることが考えられる。海外で行われたTNF-α阻害薬(エタネルセプト=本邦では乾癬は適応外)や抗IL-12/23抗体(ウステキヌマブ)との直接比較試験で優越性が証明されたことも根拠の1つとなるだろう。

 既存治療で効果不十分な関節症性乾癬については,海外第Ⅲ相試験で示されたコセンティクスの関節破壊進展抑制効果は国内未承認の用法・用量によることなどから,まず抗TNF-α抗体を用いて,次にコセンティクスを選択することが考えられる。

 いずれにせよ,生物学的製剤は乾癬を完治させる薬剤ではないので,効果が得られたら安全性に留意しつつ投与を継続する必要がある。コセンティクスに関してはERASURE試験などの延長試験で通算2年間にわたる有効性の持続と忍容性が報告されているが(2015年米国皮膚科学会),さらなるデータの蓄積が望まれる。

 同剤の重大な副作用として重篤な感染症,過敏症反応,好中球減少がある。これらは薬理作用や有効成分の本質から想定されるもので,十分に観察し,適切な処置を行う。

 一方,同剤との関連は明らかではないが,海外臨床試験で活動期のクローン病が悪化する傾向が見られている。乾癬患者におけるクローン病の罹患率は非乾癬患者の4倍とされる。患者が活動期のクローン病を合併している場合は慎重に投与する必要がある。

 悪性腫瘍の発現については,臨床試験の併合解析でプラセボ群よりもリスクが上昇する傾向は認められなかった。

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▷効能・効果
既存治療で効果不十分な下記疾患
尋常性乾癬,関節症性乾癬

▷用法・用量
通常,成人にはセクキヌマブ(遺伝子組換え)として,1回300mgを,初回,1週後,2週後,3週後,4週後に皮下投与し,以降,4週間の間隔で皮下投与する。また,体重により, 1回150mgを投与することができる。

▷薬価
皮下注用150mg      1瓶 73,123円
皮下注150mgシリンジ   1筒 73,132円

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2210号 10月15日