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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

抗ウイルス剤「ハーボニー」―ギリアド・サイエンシズ㈱―

2015年10月13日

C型慢性肝炎の第1選択薬

 

 インターフェロン(IFN)を用いずにC型慢性肝炎の抗ウイルス療法を行う「IFNフリー」のレジメンがさらに進歩した。先月発売のハーボニー配合錠(一般名・レジパスビルアセトン付加物・ソホスブビル)は2種類の直接作用型抗ウイルス剤(DAAs)を配合したもので,1日1回1錠の投与を実現した。投与期間も12週間と従来のIFNフリーのレジメンの半分の期間で済むようになった。ジェノタイプ1型のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変が適応。臨床試験では,未治療患者,既治療患者ともにウイルス持続陰性化率は100%であった。副作用はそう痒症など。アドヒアランスの確保や,ウイルス排除後も定期的な肝がんスクリーニングの必要がある。

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 C型慢性肝炎患者の肝発がん抑制にはウイルス排除が必要である。だが,従来の標準治療であるIFNを含むレジメンは,高齢,貧血,うつ病などの背景によって投与対象とならない患者が存在する。治療を開始しても副作用で継続できない患者もいる。

 実際に,ギリアド・サイエンシズの調査(n=6,082)では,国内のC型慢性肝炎患者の65~76%が60歳を超えていた。全体の6割以上は治療歴があり,未治療の主な要因は年齢であった。

 また,全体の約30%は肝線維化が進行,全体の約20%は肝硬変へと進行していた。「放置すれば,まず発がんする。治療は待ったなし」(国立国際医療研究センター国府台病院肝炎・免疫研究センター長の溝上雅史氏)の状況でありながら,標準治療薬が使用できない,あるいは効果がない患者群と言える。

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 そうしたアンメットニーズに応える新薬として,2011年以降,DAAsが相次いで承認された。当初の薬剤はIFNおよび非特異的な抗ウイルス剤リバビリン(RBV)との3剤併用療法で承認されているが,標的の異なる複数のDAAsを組み合わせて,薬剤耐性のリスクを抑えつつ相加的な抗ウイルス効果をもたらすレジメンも使用可能となった。これがIFNフリーの抗ウイルス療法である。

 ハーボニーは,その中で初めての配合剤である。HCVの複製に必須の蛋白であるNS(非構造タンパク質)5Bポリメラーゼを阻害するソホスブビル(SOF)と,同じくHCVの複製に必須のNS5Aを標的とするレジパスビル(LDV)を配合した。

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 第Ⅲ相試験はC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変患者(ジェノタイプ1型)341例を対象に行われた。無作為に分けてSOF/LDV(ハーボニー)群またはSOF/LDV+RBV群とし,12週間投与した。各群は,それまでに未治療の患者と治療歴がある患者の双方からなる。投与終了12週後に血中HCV RNA量が定量下限値未満だった患者の割合(SVR12率)を主要評価項目とした。

 その結果,ハーボニー群のSVR12率は未治療例で100%(78/78例),既治療例で100%(79/79例)だった。SOF/LDV+RBV群のSVR12率は未治療例96%(78/81例),既治療例100%(80/80例)だった。

 ハーボニー群の26%(41例)がベースラインでNS5A領域の何らかの変異を有していたが,この群においてもSVR12率は100%だった。

 ハーボニー群の副作用は157例中34例(21.7%)に認められ,主なものはそう痒症(3.2%),悪心(2.5%),口内炎(2.5%)など。SOF/LDV+RBV群の副作用は161例中81例(50.3%)で,貧血(14.3%),発疹(6.8%)などだった。

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 日本肝臓学会はハーボニー発売を踏まえて「C型肝炎治療ガイドライン」を9月に改訂。治療フローチャートを書き換え,ジェノタイプ1型の初回治療に「ウイルス量の多寡にかかわらず,SOF/LDV併用療法が第1選択である」と推奨した。

 ただし,SOFが腎排泄型であることから,ハーボニーは重度の腎機能障害または透析を必要とする腎不全の患者には禁忌となっている。また,同剤と抗不整脈薬アミオダロンとの併用で徐脈等の不整脈が現れるおそれがあるので,両者の併用は可能な限り避ける。

 さて,IFNフリーの治療には,いくつかの課題がある。例えば,治療失敗で耐性変異を出現させないために,副作用の発現に注意しつつ,用法・用量を遵守し治療を完遂することが重要となる。溝上氏は対策の例として,薬局で分包し,服用する日付を書いてもらうことを挙げる。

 肝発がん抑制効果の検証も課題である。IFNを含む治療は肝発がん抑制効果が証明されているが,IFNフリーの抗ウイルス療法については現時点ではエビデンスがない。溝上氏は「ウイルスを排除した後も定期的なフォローアップが必要だ」と話している。

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▷効能・効果
セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善

▷用法・用量
通常,成人には1日1回1錠(レジパスビルとして90mgおよびソホスブビルとして400mg)を12週間経口投与する。

▷薬価
1錠 80,171.30円

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2209号 10月5日