株式会社 ライフ・サイエンス

ライフ・サイエンスは医学・薬学専門出版社として医学・医療の発展に貢献します。

書籍検索(単行本)

キーワード検索

著者名や書籍タイトルを入力してください。
複数キーワードの場合は、スペースを入れてください。

発行年 年 ~ 
ISBN 978-4-89801--
分類

検索したい項目をチェックしてください。チェックがない場合は全てを検索します。

定期刊行物検索(新聞・雑誌)

キーワード検索

執筆者や特集タイトルを入力してください。
複数キーワードの場合は、スペースを入れてください。


新聞・雑誌別検索

検索したい項目をチェックしてください。チェックがない場合は全てを検索します。

発行年月

2010年以降のデータを検索できます。

月 ~

新薬展望

抗造血器悪性腫瘍剤「ポマリスト」―セルジーン㈱―

2015年10月08日

骨髄腫細胞に多面的に作用

 

 ポマリストカプセル(一般名・ポマリドミド)は,血液がんの1種,多発性骨髄腫(MM)の治療薬である。再発または難治性の患者で,標準治療であるレナリドミドおよびボルテゾミブの治療歴を有する患者に用いる。ポマリストはサリドマイドの誘導体であり,アポトーシス誘導,サイトカイン産生調節などによりMMに奏効すると考えられる。副作用は好中球減少症など。催奇形性を有する可能性があるため,妊娠回避プログラムなどの適正管理手順を遵守して使用する。

.

 MMは形質細胞の悪性腫瘍である。異常な形質細胞(骨髄腫細胞)が骨髄中で無秩序に増殖することで,正常な造血に支障をきたす。骨髄腫細胞は自らが増殖するだけでなく,細菌やウイルスを攻撃する能力を持たない抗体(M蛋白)を大量に産生する。さらには,破骨細胞を活性化するサイトカインを分泌し,骨吸収を亢進させる。

 臨床的には貧血,出血傾向,易感染性などを呈する。特徴的な溶骨病変,骨痛,病的骨折,高カルシウム血症,M蛋白の沈着による腎障害なども発現する。

 罹患率は50歳頃から加齢とともに増加する。健診の異常値から発見されたり,腎機能障害や骨の異常で医療機関を受診して発見されることもある。

.

 1970年代に化学療法のメルファラン+プレドニゾロン療法が導入されたが,全生存期間(OS)は平均約3年であった。大量化学療法と自家末梢血造血幹細胞移植も行われるが,実施できる患者は限られる。

 2000年代に入り,新規薬剤(ボルテゾミブ,サリドマイド,レナリドミド)が使われるようになると,生存期間は劇的に改善した。米国では,初回治療で新規薬剤のいずれかを投与された患者のOS中央値は7.3年で,そうでない群(3.8年)と比べて延長していた(2012年米国血液学会,abstr.3972)。

 慶應義塾大学血液内科の岡本真一郎教授は新規薬剤の効果について次のように解説する。

 「骨髄腫細胞は骨髄間質細胞や破骨細胞との複雑なネットワークの中で増殖している。新規薬剤は骨髄腫細胞を攻撃するだけではなく,骨髄間質細胞への接着を抑える,サイトカイン産生を制御するなど様々な作用で,化学療法にない効果を期待できる」

 しかし,レナリドミドやボルテゾミブに不応となった患者に対しては,デキサメタゾンの高用量単独投与などが行われているものの,予後改善は困難であった。

.

 ポマリストは,そのような患者に効果が期待できる新薬である。詳細な作用機序は解明されていないが,サイトカイン産生調節作用,造血器腫瘍細胞に対する増殖抑制作用,血管新生阻害作用などにより骨髄腫細胞の増殖を抑制すると考えられる。

 海外第Ⅲ相試験は,レナリドミドとボルテゾミブの治療歴がある再発・難治性MM患者455例を対象に行われた。無作為に2群に分け,ポマリスト+低用量デキサメタゾン群と対照の高用量デキサメタゾン単独群とした。

 主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)は,ポマリスト群は3.8カ月で,対照群(1.9カ月)よりも有意に延長していた(追跡期間中央値4.2カ月)。OSはポマリスト群11.9カ月,対照群7.8カ月で,こちらもポマリスト群が有意に延長していた。

 ポマリスト群の副作用は300例中247例(82.3%)に認められ,主なものは好中球減少症(47.0%),貧血(24.7%),血小板減少症(21.7%),疲労(21.0%),白血球減少症(12.0%)などだった。

.

 この結果について岡本氏は「対象は2つの薬が効かなかった抵抗性の患者であり,PFS 3.8カ月は決してマイナーではない」と評価する。

 安全性については,「血球減少症とその合併症が主体で,(他の新規薬剤で問題となる)深部静脈血栓症,末梢神経障害は少ない」とコメント。その上で「副作用の発現時期,出方は患者によって異なるので,定期的に血球数等をチェックして投与量を調整することが重要。国内第Ⅱ相試験の症例は36例と比較的少ないので,十分注意して副作用情報を共有していく必要がある」と話す。

.

 ポマリストの上市で,レナリドミドおよびボルテゾミブで病勢進行した患者に新たな治療選択肢が出てきたことになる。別の作用機序の新薬も開発段階にある。

 岡本氏は,患者の年齢によって治療目標を分けることを提唱している。すなわち,若年者では治療フリーの生存期間を長期間確保することを目指す。高齢者では,今ある治療手段を効率よく使い,QOLを保ちつつ生存期間の延長を目指す,というものだ。既存の,あるいは今後の薬剤の位置づけも,その目標に合わせて検討されるだろうと話している。

.

▷効能・効果
再発または難治性の多発性骨髄腫

▷用法・用量
デキサメタゾンとの併用において,通常,成人にはポマリドミドとして1日1回4mgを21日間連日経口投与した後,7日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお,患者の状態により適宜減量する。

▷薬価
1mg1カプセル 42,624.80円
2mg1カプセル 50,802.00円
3mg1カプセル 56,294.50円
4mg1カプセル 60,548.00円

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2208号 9月25日