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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

抗けいれん剤「ミダフレッサ」―アルフレッサファーマ㈱―

2015年09月09日

てんかん重積状態の適応を取得

 

 ミダフレッサ静注0.1%(一般名・ミダゾラム)は,「てんかん重積状態」の適応が初めて認められたミダゾラム(ベンゾジアゼピン系薬=BZD)製剤である。既存の「ドルミカム注射液」(0.5%)およびそのジェネリック品とは適応や濃度などが異なる。臨床試験では小児のてんかん重積状態において高い発作消失率を示し,新薬として承認された。静注(ボーラス静注)に引き続き持続静注が可能で,長時間安定した効果を維持できる。臨床試験で副作用は発熱,呼吸抑制,発疹,AST上昇だった。

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 てんかん重積状態は,「発作がある程度の長さ以上続くか,または短い発作でも反復しその間意識の回復がないもの」と定義されている(国際抗てんかん連盟,1981年)。「ある程度の長さ」とは, かつては30分とするのが一般的であったが, 近年は10分または5分とする意見がある。

 国内では年間7,000人程度が発生するとみられる。乳幼児に多く,原疾患がてんかんであるもののほか,熱性けいれん,中枢神経系の感染症などに起因するものがある。

 発作が5分以上持続すると,自然に終息しにくく脳に永続的なダメージが加わるおそれから,早期に治療を開始することが推奨されている。

 その薬剤として,BZD,フェニトイン,ホスフェニトイン,フェノバルビタールなどが使われている。緊急治療なので,速効性があり,抗けいれん作用が強力で,安全性にも優れることが求められる。

 国内外の教科書やガイドラインで第1選択薬の1つに推奨されているのが,BZDのジアゼパム注射剤である。同剤の静注は速効性で抗けいれん作用も強力である。ただ,効果持続時間が20~30分と比較的短い半面,脂溶性で持続投与できないので,得られた効果を維持するために別の薬剤を投与する必要がある。BZDの一般的な副作用である呼吸抑制も懸念される。

 フェニトインは,一定の効果は得られ,持続性にも優れるが,効果発現が比較的遅い。また,注射部位の組織傷害など局所の副作用,循環器系の副作用が課題となる。フェニトインの水溶性プロドラッグであるホスフェニトインは,局所の副作用は改善されているものの,全身性副作用の課題は残る。フェノバルビタールについては, 作用は強力だが,意識障害, 血圧低下, 呼吸抑制が懸念される。

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 最初のミダゾラム製剤であるドルミカムは1988年に承認され,催眠鎮静剤として使用されている(表)。また,前述したてんかん緊急治療の要件を満たす薬剤として,てんかん重積状態に適応外で使用されてきた。静脈が確保できない小児では,口腔内投与や鼻腔内投与が行われることもある。

 こうした実情を踏まえて,2009年に日本小児神経学会からミダゾラムの開発要望が出されていた。また同年9月には,適応外だが保険償還するとの見解が支払側から示されていた。

 一方,ドルミカムは小児に投与する場合は希釈して用いることが多く,緊急治療における速やかな投与という点では依然として課題があった。

 そこで,アルフレッサファーマがてんかん重積状態の保険薬で希釈せずに用いることができる新規ミダゾラム製剤の開発を開始。小児の臨床試験結果に基づいて承認を取得した。

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 臨床試験は,ジアゼパム静注が無効だったてんかん重積状態の小児患者を対象に非対照・非盲検試験として行われた。ミダフレッサのボーラス静注を行って10分以内に効果を判定。投与終了後10分以内に発作が消失し,投与終了後30分まで再発しなかった場合を有効とした。その結果,34例中30例(88.2%)が有効と判定された。発作消失までに要した時間(追加投与を含む)は平均13.5分だった。

 ボーラス静注に続いて持続静注へ移行した患者で,最終的に発作消失が24時間維持されたのは12例中8例(66.7%)だった。

 副作用は35例中3例(8.6%)に認められ,発熱,呼吸抑制,発疹,AST上昇が各1例(2.9%)だった。いずれも軽度だった。

 BZDの一般的な副作用として,呼吸抑制,血圧低下に注意する。

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 国内外の教科書やガイドラインではミダゾラムを小児のてんかん重積状態に対する第1選択薬,第2選択薬,全身麻酔薬と幅広いラインに位置付けている。今回,保険適応を有するミダフレッサが発売されたことで,同剤で開始し,無効例にはホスフェニトインあるいはフェノバルビタールを用いることが考えられる。ミダフレッサのボーラス静注で発作が消失したが再発が懸念される場合などは,同剤の持続静注に移行することができる。

 一方で,ミダフレッサとドルミカム(およびそのジェネリック品)という,適応,濃度などが異なる複数のミダゾラム製剤が併存することには注意すべきである。特に現場における取り違え防止には細心の配慮が求められる。

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▷効能・効果
てんかん重積状態

▷用法・容量
静脈内投与 通常,修正在胎45週以上(在胎週数+出生後週数)の小児には,ミダゾラムとして0.15mg/kgを静脈内投与する。投与速度は1mg/分を目安とすること。なお,必要に応じて1回につき0.1~0.3mg/kgの範囲で追加投与するが,初回投与と追加投与の総量として0.6mg/kgを超えないこと。
持続静脈内投与 添付文書参照

▷薬価
10mg1瓶 3,340円

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2206号 9月5日