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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

抗悪性腫瘍剤「オプジーボ」―小野薬品工業㈱―

2015年07月09日

がん細胞に対する免疫反応を亢進


 昨年9月発売のオプジーボ点滴静注(一般名・ニボルマブ;遺伝子組換え)は,がん細胞に対する免疫反応を亢進することで腫瘍の増殖を抑制すると考えられる薬剤である。世界で初めてのヒト型抗ヒトPD-1(programmed cell death-1)モノクローナル抗体薬で,幅広いがん種に応用可能な免疫療法薬として注目を集めている。最初の臨床適用として,根治切除不能な悪性黒色腫の治療薬として承認された。3週間間隔で投与する。副作用はそう痒症など。重大な副作用として間質性肺疾患,肝機能障害などがある。


 悪性黒色腫(メラノーマ)はメラノサイト系の悪性腫瘍で,黒褐色の病変が足底,指趾の爪,顔面などに好発する。過度の日光照射を受け続けることなどが原因とされている。

 白人に比べて黄色人種では比較的少なく,日本における発生頻度は年間10万人あたり2人程度とされる。頻度は少ないながらも,皮膚腫瘍で死亡する患者の約8割を占めるほど,悪性度が高いがんである。

 治療の第一選択は外科的切除で,進行した場合は薬物治療が行われる。標準治療薬としてアルキル化薬のダカルバジン(DTIC)が頻用されている。

 だが,日本皮膚科学会の「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版」では,切除不能な遠隔転移を有するメラノーマ患者に対して,DTICは「奏効率は10~20%,完全奏効率は5%,長期完全奏効率は2%以下であり,満足できるものではない」と記載。その上で「DTICに勝る有益性をもつ治療薬の導入が望まれる」としている。


 PD-1は活性化したリンパ球などに発現する受容体である。静岡県公立大学法人理事長の本庶佑(ほんじょ・たすく)氏らが京都大学で研究中に発見した。PD-1は抗原提示細胞に発現するPD-1リガンド(PD-L1,PD-L2)と結合し,リンパ球に抑制性シグナルを伝達してリンパ球の活性化状態を負に調節している。

 がん細胞もPD-1リガンドを発現しており,免疫抑制のシグナルを伝えている。免疫応答が負に制御され,がん細胞が抗原特異的なT細胞からの攻撃を回避する機序の1つになっていると考えられている。実際に,様々ながん種でPD-L1の高発現が報告されている。

 抗PD-1抗体はPD-1の細胞外領域に結合して,PD-1とそのリガンドとの結合を阻害する。それにより,がん抗原特異的なT細胞の増殖,活性化および細胞傷害活性の増強などにより,腫瘍増殖を抑制すると考えられる。


 第Ⅱ相試験は,化学療法歴を有する根治切除不能な進行・再発悪性黒色腫患者35例を対象に行われた。その結果,CR1例,PR7例,SD15例で,奏効(CR+PR)率は22.9%(8/35例)だった。奏効率の90%信頼区間の下限(13.4%)は,DTICの成績をもとに設定した閾値奏効率(12.5%)を上回っていた。全生存期間中央値は473日だった。

 副作用は35例中30例(85.7%)に認められ,主なものはそう痒症(31.4%),遊離トリヨードチロニン減少(22.9%),血中TSH増加(20.0%),白斑(17.1%),白血球数減少(17.1%),遊離サイロキシン減少(17.1%)などだった。


 昨年のオプジーボに続き,今年2月にはがん増殖に関与するBRAF蛋白を阻害する分子標的薬ベムラフェニブも発売された。さらなる新薬も開発段階にある。これらをどう使い分けていくかが今後の関心の的になるだろう。

 現時点で言えるのは,オプジーボは化学療法歴のある患者を対象とした臨床試験の結果をもとに承認されていること。よって,セカンドラインの患者に用いるのが妥当だと言える。

 一方ですでに,BRAF 遺伝子変異がない進行性悪性黒色腫418例の1次治療における海外の二重盲検比較試験「CheckMate-066」で,オプジーボが全生存期間,無増悪生存期間をDTICよりも有意に延長したと示されている。近い将来,オプジーボの位置づけは変わると予測される。

 抗PD-1抗体の副作用として過度の免疫反応が考えられる。臨床試験では,重大な副作用として肝機能障害,甲状腺機能異常,間質性肺疾患,infusion reactionが発現している。

 大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任准教授の西川博嘉氏は「今までの薬とは違う副作用が出るかもしれないことをがん治療医が認識し,患者にもきちんと情報を伝えておく必要がある」と指摘する。

 オプジーボを始めとして最近では免疫療法薬の開発が急速に進み,悪性黒色腫はがんの中でも免疫療法の応用が進んだ疾患として注目されている。西川氏は免疫療法の特徴の1つとして「効果の発現時期は標準治療と同様だが,長期生存が得られる患者がいる」ことを挙げる。それとともに「他の免疫療法との併用も発展していくだろう」と展望を示している。


▷効能・効果
根治切除不能な悪性黒色腫

▷用法・用量
通常,成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として,1回2mg/㎏(体重)を3週間間隔で点滴静注する。

▷薬価
100mg1瓶 729,849円
20mg1瓶 150,200

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2200号 7月5日