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ISBN 978-4-89801--
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老年科医のひとりごと 第61回

壊れた体重計?

井口 昭久
愛知淑徳大学健康医療科学部教授

 8年前に市役所を定年退職した宮下さんは68歳である.外見は土木作業員風であり,言葉遣いはやくざ風である.市役所での仕事は土木課であった.最近ではほとんど髪がなくなったが「パンチパーマにしろ」と言って床屋泣かせである.
 定年後は大人しくなったが,久しぶりに看護師を困らせる出来事があった.
 正月明けの外来で看護師が彼の体重を測定すると予想より高めに出た.彼は大男で身長は176cmで体重は100kgを前後していたがその日は105kgであった.「そんな筈はない」と彼は納得しなかった.「俺は正月でも餅も食わずに体重減少に努めてきた.体重は減りこそすれ増えるなどということはあり得ない」と言って
 「お前乗ってみろ!!」と看護師に迫った.
 体重計が壊れているというのが彼の主張であった.
 しかし看護師はほかの人の体重はいつも通りだったので体重計はおかしくないと言って拒否した.
 看護師は太っていた.体重だけは他人に知られたくないと思っていた.
 「ちょっと乗ってみるだけじゃねーか!!やってみろよ!!」
 看護師にとって体重計に乗るのは裸になるのと同じ程度に恥ずかしかった.
 「お前に裸になれって言っているわけじゃないんだぞ!!体重計が壊れていることを確かめるために乗ってみろと言ってるんだ!」と執拗に看護師を責め立てたが,結局,看護師は体重計に乗らなかった.乗っていれば看護師も「体重計が壊れている」という案に同意したであろうと推測されthumbnail_壊れた体重計?(W300)た.
 2人の諍いは私の所に持ち込まれてきた.「先生乗って上げてください」と看護師が体重計を持って診察室へ来た.
 私が乗ると60kgであった.私の身長は宮下さんと同じで176cmである.
 最近体重を量ったことがなかったので体重計が正確かどうか不明であったが,60kgは宮下さんを納得させるに十分な低体重であった.
 バツが悪くなった宮下さんは「最近部屋のふすまがスーっと開くとおしっこがしたくなるんですよ」と言って頻尿に話題を変えた.

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