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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

抗ウイルス剤「ソバルディ」 ―ギリアド・サイエンシズ㈱―

2015年06月22日

2型C型肝炎も「IFNフリー」で

 ジェノタイプ1型に続いて2型のC型慢性肝炎に対しても,インターフェロン(IFN)を用いない経口抗ウイルス剤のみの治療が可能になった。

 2型に施行するのは,5月に発売された直接作用型抗ウイルス剤(DAAs)ソバルディ錠(一般名・ソホスブビル)と既存の非特異的抗ウイルス剤リバビリン(RBV)との併用療法である。臨床試験では持続的ウイルス陰性化率は96.4%,副作用は貧血またはヘモグロビン減少などだった。投与期間は12週間と,ペグIFNの半分以下に短縮された。

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 昨年,IFNを用いずに複数の経口剤でC型慢性肝炎の抗ウイルス療法を行う「IFNフリー」の薬剤(ダクラタスビル塩酸塩・アスナプレビル=DCV/ASV)が初めて上市された。IFNを含む治療と比べて有効性・忍容性が高く,なおかつ治療期間を短縮できると注目されている。だが,DCV/ASVの適応はジェノタイプ1型に限られている。

 国内ではC型肝炎ウイルス(HCV)感染者の約2~3割がジェノタイプ2型とされている。このタイプには,ウイルス量などによってペグIFN+RBVの24~48週間投与,IFNβ+RBVの24週間投与などが施行されている。これらの初回治療の持続的ウイルス陰性化率は70~90%で,難治とされる1型に比べれば高い成績である。

 ただ裏を返せば,2型においても初回治療でウイルス駆除に至らない患者が10~30%はいることになる。既治療患者に対するペグIFN+RBV併用療法の持続的ウイルス陰性化率は50%程度と報告されている。

 ペグIFNは週1回の皮下注射が必要である。さらには,1型・2型を問わず,高齢や貧血,うつなどの背景因子によってIFN治療に不適格の患者,副作用のために治療期間を完遂できない患者,IFN治療を希望しない患者も存在する。IFNフリーが望まれるゆえんである。

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 ソバルディは,ジェノタイプ2型に対して初めてIFNフリーの治療を可能にした薬剤だ。抗インフルエンザウイルス剤「タミフル」などで知られるギリアド・サイエンシズが開発した。

 核酸アナログ製剤で,作用機序は既存のDAAsとは異なる。すなわち,HCVの複製に必須の非構造蛋白質5B(NS5B)ポリメラーゼを阻害し,ウイルスの増殖を抑制する。分かりやすく言い換えるなら,「ウイルスをだましてHCVの核酸に入り込む。『トロイの木馬』となって,HCVのRNA鎖の伸長反応を停止させる『チェーンターミネーター』である」(山梨県立病院機構理事長の小俣政男氏)。

 DAAsはあと数社の薬剤が開発の最終段階に入っている。承認済みの薬剤と合わせ,作用標的や構造で分けるのが一般的だが,小俣氏は「非常に単純。(ソバルディのように)核酸の中に潜り込むか,(他剤のように)蛋白と蛋白の相互作用を阻害するか。その違い」と喝破する。

 DAAsの課題の1つとされる耐性ウイルスの出現についてもその観点で説明がつくとする。「蛋白を阻害する薬は必ずしも蛋白の形に100%フィットすることはなく,ウイルスはするっと逃げてしまう。逃げた魚(ウイルス)はその『疑似餌』には引っかからず,耐性変異につながる可能性がある」。これに対して核酸アナログ製剤は耐性変異に対するバリアが高いという。

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 第Ⅲ相試験はジェノタイプ2型のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変患者140例を対象に行われた。ソバルディとRBV(体重に応じて600~1,000mg/日)を併用し12週間投与した。

 主要評価項目である「投与終了から12週間後の血中HCV RNA量が定量下限値未満の患者の割合(SVR〈持続的ウイルス陰性化〉12率)」は96.4%だった。このうち未治療患者(n=83)では97.6%,既治療患者(n=57)では94.7%だった。

 年齢(65歳以上か未満か),肝硬変の有無,IFN適格性,前治療に対する反応性などの因子で解析したところ,いずれの部分集団においても優れたSVR12率が得られた。

 HCV駆除ができなかった患者が5例(未治療群2例,既治療群3例)あったが,いずれも投与終了後の再燃で,治療中のウイルス学的ブレイクスルーは認められなかった。NS5B領域のS282T耐性変異,ソホスブビルに対する感受性低下を伴う変異株は認められなかった。

 副作用は140例中61例(43.6%)に認められ,主なものは貧血またはヘモグロビン減少(15.0%),頭痛(5.0%),倦怠感(4.3%),悪心(4.3%),そう痒症(4.3%)などだった。

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 小俣氏はソバルディについて「日本の患者は高齢化し肝線維化が進んでいるが,この薬剤でウイルスを駆除する意義がある。C型肝炎が100%治る可能性が出てきた」と語る。

 副作用の貧血またはヘモグロビン減少が15%に発現していることについては「RBVによる貧血と考えられる。マネジメントが必要だ」と指摘している。

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▷効能・効果
セログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善


▷用法・用量
リバビリンとの併用において,通常,成人にはソホスブビルとして400mgを1日1回,12週間経口投与する。


▷薬価
400mg1錠 61,799.30円

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2198号 6月15日