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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

酸関連疾患治療剤「タケキャブ」―武田薬品工業㈱・大塚製薬㈱―

2015年05月18日

患者を選ばない酸抑制効果

 タケキャブ(一般名・ボノプラザンフマル酸塩)は,カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)と呼ばれる新規の酸分泌抑制剤である。国内試験では,素早い治療効果の立ち上がり,患者の遺伝子多型に左右されない均一性などが確認されている。承認時までの試験では8.2%(胃潰瘍,十二指腸潰瘍,逆流性食道炎の場合)に副作用が認められた。主な副作用は便秘など。なお,国内 では製造・販売は武田薬品が行い,情報活動は大塚製薬と武田薬品の両社で実施する。

◆                ◆               ◆

 酸関連疾患に対する治療は,ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)とプロトンポンプ阻害薬(PPI)の登場で一変したと言われている。両剤の登場で,治療困難だった消化性潰瘍の大半は治療可能となった。

 中でもPPIは,既存薬の中で最も強い治療効果を持ち,国内では消化性潰瘍,胃食道逆流症(GERD),ピロリ菌除菌などの薬物治療に用いられる。

 とはいえ,既存のPPIにも弱点がないわけではない。

①効果の発現が遅い。
②夜間の胃酸分泌を十分に抑制できない。
③患者の薬物代謝酵素の遺伝子多型による治療効果の個人差が大きい。

 ――など,いく つかの課題が指摘されている。

◆                ◆               ◆

 ボノプラザンは,カリウムイオン競合型アシッドブロッカーと呼ばれる新規の酸分泌抑制剤である。既存のPPIが酸で活性体に変換されることで効果を発現するのに対して,ボノプラザンは酸による活性化を必要とせず,カリウムイオンに競合的な様式でプロトンポンプを阻害し,酸分泌を抑制する。

 また,既存のPPIが酸性環境下では不安定で分泌細管に長時間留まれないのに対して,ボノプラザンは酸性環境下でも安定なため,分泌細管に高濃度に集積し長時間残存する。そのため,薬物血中濃 度の低下後もプロトンポンプを阻害することができ,長時間にわたる酸分泌抑制が期待できるとされる。

 ヘリコバクター・ピロリ除菌療法におけるボノプラザンの有用性を検討した国内臨床試験は,PPI (ランソプラゾール)を対照薬として実施された。

 試験の結果,投与終了4週後における1次除菌率(アモキシシリン+クラリスロマイシン併用)で,ボノプラザン群(92.6%)は対照群(75.9%)に対する非劣性が認められた。クラリスロマイシン耐性株を有する患者に対する除菌率はボノプラザン群(82.0%),対照群(40.0%)で,特に抗菌薬耐性群において高い除菌率が示された。

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 逆流性食道炎治療における有効性を検討した国内臨床試験も,ランソプラゾールを対照薬として実施された。

 試験の結果,2週後/4週後/8週後における内視鏡所見での治癒率で,ボノプラザン群(90.7%/96.6%/99.0%)は,対照群(81.9%/92.5%/95.5%)に対する非劣性が認められた。単純にみれば ,対照群が8週で達成した結果をボノプラザン群は4週で達成している。

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 胃潰瘍,十二指腸潰瘍,逆流性食道炎を対象とした承認時までの試験で認められた副作用は,2271例中186例(8.2%)。主な副作用は便秘(0.7%),下痢(0.6%),食道カンジダ症(0.5%)などだった。

 承認までの臨床試験では,血清ガストリン(胃酸分泌を促すホルモン)の上昇が認められた。しかし,最長52週間まで投与しても,胃粘膜病理組織学的検査で神経内分泌細胞の過形成,異形成および神経内分泌細胞腫瘍は確認されなかったという。

 高ガストリン血症は既存のPPIの投与例でも報告されているが,神経内分泌細胞腫瘍の発生はほとんど報告されていないという。同社では,引き続き長期間の投与における安全性についても注視をしていきたいとしている。

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▷効能・効果
○胃潰瘍,十二指腸潰瘍,逆流性食道炎,低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制,非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制
○下記におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助:胃潰瘍,十二指腸潰瘍,胃MALTリンパ腫,特発性血小板減少性紫斑病,早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃,ヘリコバクター・ピロリ感染胃

▷用法・用量
○胃潰瘍・十二指腸潰瘍の場合,逆流性食道炎の場合:1回20mgを1日1回経口投与する。
○逆流性食道炎の再発・再燃の維持療法の場合:1回10mgを1日1回経口投与する。効果不十分の場合は1回20mgを1日1回経口投与する。
○低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制,非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制:1回10mgを1日1回経口投与する。
○ヘリコバクター・ピロリの除菌の補助の場合:1回20mgを1日2回経口投与する。

▷薬価
・10mg1錠 160.10円
・20mg1錠 240.20円

 

MEDICAMENT NEWS 第2195号 5月15日