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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

遺伝子組換え血液凝固第Ⅷ因子 Fc領域融合タンパク質製剤「イロクテイト」 ―バイオジェン・アイデック・ジャパン㈱―

2015年04月27日

血友病Aの管理に持続型製剤

 イロクテイト静注用(一般名・エフラロクトコグ アルファ:遺伝子組換え)は長時間作用型の血友病A治療剤である。ヒト遺伝子組換え血液凝固第Ⅷ因子とヒト免疫グロブリンG1(IgG1)のFc領域を融合した。この技術によって循環血液中に再循環され,従来の製剤よりも血漿中の消失半減期が延長している。凝固因子の定期補充療法の場合,3~5日間隔もしくは週1回の投与で済む。副作用は倦怠感,関節痛など。

◆                ◆               ◆

 血友病患者は軟部組織や関節内の自然出血,外傷性出血を頻繁に繰り返し,関節障害,筋拘縮,重度の身体障害を引き起こす――。このように書き出したいところだが,「現在,血友病のイメージは大きく変わっている」(荻窪病院〈東京都杉並区〉の花房秀次理事長)。

 「確かに成人は出血症状が発現するが,小児に関しては出血をほぼ100%コントロールすることが可能になり,『ゼロブリーディング』を目指せるようになった。日常生活にも制限はない」。
 出血頻度の低減に寄与しているのが,凝固因子の定期補充療法だ。その名の通り,非出血時に欠乏する凝固因子を長期間にわたり定期的に補充する止血管理法である(日本血栓止血学会「インヒビターのない血友病患者に対する止血治療ガイドライン2013年改訂版」)。

 平成25年の調査では,血友病A患者の約半数が週1回以上の定期的な投与を実施していると報告されている。重症患者に限れば,実施率は7割に上るという。

 ただし,従来は週3回あるいは2日に1回の注射(前出のガイドライン)が必要とされ,投与頻度は課題であった。

 「患者は2歳くらいから活発に動いて関節内出血を起こすようになるので,定期補充療法を始めるケースが多いが,家庭で2歳児,3歳児に注射をするのは困難である。また思春期になると,親の言うことを聞かなくなり,週3回の投与をいやがるもの」(花房氏)ということは容易にうなずける。
 こうしたことから,長時間作用型製剤の必要性が裏付けられる。

◆                ◆               ◆

 イロクテイトは第Ⅷ因子とIgG1のFc領域の融合タンパク質である。従来の薬剤は細胞に取り込まれた後,リソソームによって分解されてしまうが,イロクテイトはFc 領域がNeonatal Fc受容体(新生児型Fc受容体=FcRn)と結合することで,分解されずに細胞内でリサイクルされる。FcRnは,血漿中から細胞内に取り込まれた免疫グロブリンを再循環する役割を持っているからだ。

 この技術により,イロクテイトの血漿中半減期は約19時間と,類薬の1.5倍に延長した。

 花房氏は「重症ほど出血回数が多いわけだが,凝固因子製剤の予防的投与によって,重症患者を中等症や軽症に低減でき,関節内出血などを抑制できる。長時間作用型であるイロクテイトの上市が患者のQOLを大きく変えると予測される」と期待を示す。

 これまで凝固因子製剤の定期的な投与が困難だった幼少児への投与,あるいは治療への参加意欲が低下していた思春期の患者において,特に長時間作用型のメリットが生かせると考えられる。

 さらには次のような例も考えられる。「血友病治療の進歩で患者が長生きするようになると,高齢化で眼が見えづらくなる,手が震えるといった現象が起きる。訪問看護師に注射をしてもらう方法などがあるが,イロクテイトならその回数を低減できる」(花房氏)。

 一方,「免疫グロブリンは長い歴史があり,安全性は高いだろうと評価できる」とした上で「患者は生涯にわたる治療を必要とするので,イロクテイト長期投与時の安全性は大きな検討課題の1つとなるだろう」と話している。

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 承認の根拠となった国際共同第Ⅲ相試験は,治療歴のある重症血友病A患者(内因性第Ⅷ因子活性が1%未満)165例(うち日本人14例)を対象に行われた。イロクテイトの用法・用量の異なる3群(個別化投与群,週1回投与群,出血時投与群)を設定し,実投与日数50日間または28~52週間投与した。

 その結果,有効性の主要評価項目である年間出血回数は,イロクテイトの定期補充療法群(個別化群,週1回群)は,同剤の出血時投与群と比べてそれぞれ92%,76%低減し,有意な差が認められた。出血しても,87.3%(661/757件)は同剤の1回追加投与で止血した。

 治療歴のある患者におけるインヒビターの発現は認められなかった。

 副作用は164例中9例(5.5%)に認められ,倦怠感(1.2%),関節痛(1.2%)などだった。

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▷効能・効果=血液凝固第Ⅷ因子欠乏患者における出血傾向の抑制

▷用法・用量=本剤を添付の溶解液全量で溶解し,数分かけて緩徐に静脈内に投与する。
 通常,1回体重1kg当たり10~30国際単位を投与するが,患者の状態に応じて適宜増減する。
 定期的に投与する場合,通常,1日目に体重1kg当たり25国際単位,4日目に体重1kg当たり50国際単位から開始し,以降は患者の状態に応じて,投与量は1回体重1kg当たり25~65国際単位,投与間隔は3~5日の範囲で適宜調節する。週1回の投与を行う場合は,体重1kg当たり65国際単位を投与する。

▷薬価(溶解液付)

250国際単位1瓶 26,766円 1,500国際単位1瓶 132,105円
500国際単位1瓶 49,637円 2,000国際単位1瓶 170,702円
750国際単位1瓶 71,236円 3,000国際単位1瓶 244,983円
1,000国際単位1瓶 92,050円    

 

MEDICAMENT NEWS 第2193号 4月25日