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ISBN 978-4-89801--
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老年科医のひとりごと 第86回

普通の風邪

井口 昭久
愛知淑徳大学健康医療科学部教授

  特別養護施設の理事長から電話があった.「奇妙な感染症が流行っている」ということだった.入所患者の大半が発症している.症状は頭痛,咽頭痛,咳,鼻水,発熱だという.病院も併設しているので,病院へ来院させて外来の担当医に診察させたそうだ.4名の内科の医者が総勢60名程度の患者を診たそうだが,どの医者も診断ができなかった.
 「いずれの患者も症状は軽く数日で治るのだが,原因を知りたい」という電話が私に掛かってきた.私は大学の感染症医学教室に問い合わせることを勧めると,彼は患者から集めた検体を持って大学を訪れた.
 そしてすぐに結果が出た.コロナでもインフルエンザでもなく,従来から流行っていたいわゆる風邪の病原体が正体であった.大学の研究者は「これだけ集団発生をみた例はほかにない」ということで論文にしたいということだったそうだ.
 施設では新型コロナウイルスの予防の為に万全な対策をとってきた.3年間は完璧に抑えられてきた普通の風邪が日の目をみて活躍しだした,ということのようだった.
 それから1カ月経って,私は愛知県東部の市役所で講演をする予定であった.講演の前日の夜中3時ごろ息苦しさに目が覚めた.熱を測ると37.8℃であった.翌朝,コロナのキットで定性試験をしたが,陰性であったので,風邪だろうと思い,講演を断ることなく車で出掛けた.肉体的には少しだるさはあったが運転には問題なく講演もできそうであった.講演はトリミング済(W270)90分の予定であったが,私は体調が思わしくない旨を言って講演時間を60分に短縮したいと聴衆に告げた.聴衆は「どうぞ,どうぞ,短くしてください」と時間短縮を喜んだ.
 その日の夜中の3時ごろ体温が39℃であった.翌朝,クリニックへ行き調べるとインフルエンザであった.
 私のインフルエンザはまもなく鎮静すると思うが読者の雑誌離れは終わらないようだ.
 この雑誌は終わりになるが,長い間お付き合いして頂いた読者の皆さんと編集者の皆さんに深く感謝します.

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