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ISBN 978-4-89801--
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老年科医のひとりごと 第36回

最終講義

井口 昭久
愛知淑徳大学健康医療科学部教授

 学問は進歩している.その先端を直接,学生たちに伝えても意味がない.
まずは基礎から教えなければならない.私なりに工夫を凝らして授業を組み立ててきた.
 若い頃は忙しくても,忙しくなくても講義の準備は一夜漬けであった.最近は比較的早くから講義の準備に取りかかるようになった.今年も,新しい企画で臨もうと試行錯誤を繰り返す.
 学生に配るプリントの草案ができあがる頃になると,昨年も同じことをやっていたような気がする.そう思ってパソコンを辿ってみると,昨年も同じパターンであった.昨年も新企画のつもりで甲高い声でやったことを思い出した.
 パソコンの記録によれば一昨年も,さらにその前の年も,同じことをやっていたようだ.
 年数を重ねても人間は進歩するとは限らない.毎回,同じ講義でも「先生!それは去年と同じです!」と学生に注意されることはない.学生は毎年入れ替わるからである.
 講義には純文学的な講義と大衆文学的な講義がある.昔の大学での講義は純文学風が多かった.教授最終講義(W290)が学生の理解や関心とは無関係なことを独り言のようにしゃべっていた.純文学風の講義はよくないといわれ始めたのは20世紀の末からであった.
 全国の医学部の教育担当者が富士山の麓に集められて講義の仕方を教え込まれた.私も研修に参加したが,そこで「甲高い声はいかがわしい」ということを教わった.
 国立大学で24年間,私立大学に移ってから13年間も講義をしてきた.
 長かった講義生活も今年で終わりになる.最終講義を行うことになった.
 12年前に国立大学を退官したときも最終講義を行ったので,今回で2度目の最終講義となる.

 今度の最終講義は声を潜めて新企画で望もうと思っている.

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