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ISBN 978-4-89801--
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老年科医のひとりごと 第35回

老人差別

井口 昭久
愛知淑徳大学健康医療科学部教授

 私の子供の頃は昭和20年代であった.隣近所にはどこの家にもお婆さんがいたが,お爺さんは少なかった.その頃の男性の平均寿命はまだ60歳に届いていなかった.
 年齢を聞くとお婆さんはMCIでもないのに「さー,いくつだったかー」としばらく考えて「65歳ぐれえずら」などと曖昧であった.
 お婆さんは「お婆さん」であって,年寄りの年の差なんかどうでもよかった.
 今では自分の年齢は満年齢でいうが,その頃は数え年も使っていた.時と場所によって,自分のトシを満年齢で言ったり,数えで言ったりしていた.
 満年齢と数え年では最大2年も違う.
 しかし昨今の日本の社会では様々な社会制度が満年齢によって規定されるようになった.
 高齢者は自分の年齢を前面に掲げて社会とお付き合いをしなければならなくなった.
 高齢者が大量に出現するようになってくると,高齢者の扱いを年齢によって区別するようになったのだ.だから現在の高齢者は柵をまたぐようにして年齢を確かめながら年をとっている.
 最初は定年である.この制度によって本来は「失業者」であるべき高齢者が「退職者」として扱われるようになった.
 70歳になると高齢者の自動車免許証の取得に年齢ゲートが設けられている.
 さらに最近では75歳になれば認知症検査を受けなければならない.
 老人差別(W300)それに75歳を過ぎると誰でも後期高齢者医療制度に組み込まれる.
 この頃の日本人は自動車事故が報じられると必ず年齢を確かめるようになった.
 年齢によって人の価値を判断する風潮が広がってきている.
 これほどに年齢を意識しなければならない社会は世界史でも存在したことはなかった.
 社会制度の改革によって高齢者の生活が改善されたことは間違いないが,結果的に年齢差別を助長することにもなっている.

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