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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤「イフェクサーSR」―ファイザー㈱―

2016年05月12日

MEDICAMENT NEWS 第2230号 5月5日

低用量でSSRI様,高用量でSNRI

 イフェクサーSRカプセル(一般名・ベンラファキシン塩酸塩)は世界的に著名な抗うつ薬である。セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)で,低用量では主にセロトニン系に作用し,高用量ではセロトニン系とともにノルアドレナリン系の作用がより強まる。多くのエビデンスから,寛解率が高いことやうつ病・うつ状態の患者の不安症状,意欲低下,社会機能障害を改善することなどが示されている。1日1回投与。副作用は悪心,腹部不快感,傾眠など。


 近年,うつ病治療のゴールとして,抑うつ症状の回復にとどまらず,「社会機能の回復」が重視されるようになってきた。仕事を順調に遂行できる,余暇を楽しめる,家族や親戚との関係を保てるといった機能の回復である。

 うつ病は急性期の治療に反応して寛解し,それが16~20週間持続して回復と言えるまでには,数カ月から1年はかかるとされる。抑うつ症状の回復のみをもって復職すると,再発のおそれがある。再発を防ぐためにも,初回治療で社会機能を含めて確実に寛解・回復に至ることが重要となる。

 しかし,最初の抗うつ薬で寛解が得られるのは,全体の約3分の1程度とされる(Rushら,2006年)。また,選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI),SNRIなど新規抗うつ薬にも,それぞれのクラスあるいは薬剤に特徴的な副作用が知られている。

 イフェクサーSRはすでに海外では約20年の使用実績があり,第1選択薬として,および他の第1選択薬に反応しない例などの第2選択薬として推奨されている。


 国内第Ⅲ相試験は,うつ病・うつ状態の患者を対象に行われた。無作為に3群に分け,イフェクサーSR 75mg/日(固定用量)群,75~225mg/日(可変用量)群,プラセボ群とし,8週間(有効性評価期間)投与した。

 主要評価項目であるハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D17)合計点のベースラインからの変化量は,固定用量群(n=174)が10.8点減少,可変用量群(n=177)が10.3点減少であったのに対して,プラセボ群(n=184)は9.2点の減少にとどまり,固定用量群とプラセボ群の間に有意差が認められた。

 承認時までの国内臨床試験で副作用は1,255例中1,028例(81.9%)に認められ,主なものは,悪心(33.5%),腹部不快感(腹痛,膨満,便秘等)(27.2%),傾眠(26.9%),浮動性めまい(24.4%),口内乾燥(24.3%),頭痛(19.3%)などだった。

 うつ病に対する海外8試験のメタ解析(n=2,045)では,寛解率はイフェクサー(本邦未承認の即放錠を含む)群は45%,SSRI群が35%,プラセボ群が25%で,イフェクサーはSSRI,プラセボよりも有意に優れていた(Thaseら,2001年)。イフェクサーによる効果は2週時点でSSRIよりも有意に優れていた。有害事象による中断は,イフェクサー群9%,SSRI群7%,プラセボ群2%で,実薬各群とプラセボ群との間に有意差が認められた。

 うつ病患者28例を対象とした海外臨床試験では,三環系抗うつ薬と比べて社会機能を改善したとのデータもある(Gorensteinら,2002年)。これは三環系抗うつ薬の副作用発現率の高さが関係している可能性が示唆されている。


 イフェクサーSRの特性として,低用量でSSRI様の作用,高用量でSNRIという両面を有することが挙げられる。ちなみに高用量とは,同剤の臨床有効用量(75~225mg/日)のうち,150mg/日以上を指すようだ(臨床精神薬理19:395-405,2016)。

 よって,主にSSRI様に作用する75mg/日で効果不十分な場合(かつ忍容性に問題がない場合),150mg/日以上に増量することで,SNRIとしての作用を示す。他剤に切り替えて,その初期用量から始める操作を省けることになる。

 不安症状を伴ううつ病患者に対して治療当初に抗不安薬を併用することがあるが,イフェクサーSRで治療を開始すれば,抗不安薬を併用しなくとも,あるいは短期間の併用で不安症状の改善が期待できる。

 一方,他のクラスの抗うつ薬で効果不十分な場合にイフェクサーSRに切り替える治療戦略も考えられる。ミルタザピンや三環系抗うつ薬などがこの位置づけで使用されることがあるが,鎮静作用や抗コリン作用が問題となることがある。イフェクサーSRはそうした副作用のリスクは少ないと考えられる。

 一方で,同剤の主な副作用として,他のSNRIと同様に,消化器症状が発現する。臨床試験では,半数以上が投与開始後2週間以内に発現し,ほとんどは軽度または中等度の事象であった。所定の初期用量と増量法を遵守する必要がある。なお,増量により不眠症状,血圧上昇などのノルアドレナリン作用が現れるおそれがあるので,慎重に観察する。


▷効能・効果
うつ病・うつ状態

▷用法・用量
通常,成人にはベンラファキシンとして1日37.5mgを初期用量とし,1週後より1日75mgを1日1回食後に経口投与する。なお,年齢,症状に応じ1日225mgを超えない範囲で適宜増減するが,増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として75mgずつ行うこと。

▷薬価
37.5mg1カプセル 157.90円
75mg1カプセル 265.90円

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2230号 5月5日