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ISBN 978-4-89801--
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新薬展望

がん性皮膚潰瘍臭改善薬「ロゼックス」―ガルデルマ㈱―

2015年12月11日

がん性皮膚潰瘍の臭気を軽減

 ロゼックスゲル(一般名・メトロニダゾール)は「がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減」に対する国内で初めての治療薬である。がん性皮膚潰瘍は乳がんなどの末期に見られ,皮膚潰瘍部位に嫌気性菌が感染すると特有の臭気を帯びて患者や家族のQOLを低下させる。同剤は有効成分のメトロニダゾール(MTZ)が,臭気物質を産生する嫌気性菌への抗菌作用を介して臭気を軽減する。1日1〜2回投与する。臨床試験で副作用は潰瘍部位からの出血であった。

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 がん細胞の皮膚表面への浸潤や皮膚への転移によって,がん性皮膚潰瘍が生じる。進行すると出血,疼痛,滲出液を伴うことが多い。乳がんで頻度が高く,患者の約4%ががん性皮膚潰瘍を発現すると報告されている(日本乳癌学会,2005年全国乳癌患者登録報告)。

 皮膚潰瘍部位に嫌気性菌(Bacteroides fragilis,Prevotella属,Fusobacterium nucleatum,Clostridium perfringensなど)が感染すると,プトレシン,カダベリンなどが産生されて特有の臭気を帯びるようになる。がん性皮膚潰瘍のすべてが臭気を伴うわけではないが,臭気が強くなると家族や医療従事者が病室に入った時点でにおいを感じるようになる。患者本人に精神的苦痛を与えQOLを低下させるとともに,家族にとっても介護やコミュニケーションに支障をきたすおそれがある。

 乳がんの他,頭頸部がん,舌がんなどでがん性皮膚潰瘍臭発現の報告がある。

 だが,これまでがん性皮膚潰瘍臭の治療に承認された薬剤はなく,医療機関ごとに独自の取り組みがなされていた。日本病院薬剤師会の調査では,回答した382施設(がん診療連携拠点病院または緩和ケア病棟のある病院)のうち83%ががん性皮膚潰瘍臭に対する薬物療法を実施していると答えており,その大半が院内製剤を使用していた(渡辺ら,2011年)。具体的には,MTZ外用剤が最も多く,次いで塩化亜鉛を主剤に米国のMohsらが考案した「モーズペースト」である。

 MTZ外用剤は,臭気物質を産生する数種類の嫌気性菌(グラム陽性菌およびグラム陰性菌)に対して抗菌作用を示すことで,がん性皮膚潰瘍に伴う臭気を改善する。WHOや米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドラインでも推奨されている標準薬である。

 一方で,院内製剤には一般的に,調製に要する人的・物的資源,品質の担保,用法・用量や安全性に関する情報の不足,有害事象発生時の対応といった課題がある。

 そこで,日本緩和医療学会,日本緩和医療薬学会からMTZ外用剤の開発要請が厚生労働省に上がり,英国法人でその効能・効果を取得した製品を販売しているガルデルマ株式会社に対して厚生労働省が開発要請した。

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 第Ⅲ相試験は,がん性皮膚潰瘍を有する患者21例を対象に行われた。においスコアで評価し,スコア2以上の患者を対象とした。全例が乳がんの女性で,病期はⅢ期が5例,Ⅳ期が16例である。皮膚潰瘍の大きさは平均68.6cm2( 4〜140cm2)であった。

 1日1〜2回,患部を十分に清浄した後,ロゼックスゲルをガーゼに塗布して貼付した。投与期間は14日間。主要評価項目は「においの改善率」で,医師の評価でにおいスコアが0,1まで低下した場合を有効と判定した。

 その結果,においの改善率は95.2%だった(14日または試験中止時)。においスコアの推移は,7日目でスコア0が52.4%,スコア1が23.8%に達した。被験者の評価では,7日目にはスコア0が42.9%,スコア1が57.1%となり,スコア2以上は見られなかった。

 副次的に評価した潰瘍部位の臨床所見でも,ドレッシング材交換回数が減少し,分泌液の性状が膿性から漿液性に変化した。
 副作用は21例中2例(9.5%)に認められ,いずれも潰瘍部位からの出血であった。

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 これまで院内製剤として使用されてきたMTZ外用剤だが,製造販売承認を取得した製品が発売されたことで,患者にとって十分ながんサポーティブケアの施行,医療従事者の負担軽減に寄与すると見られる。

 同剤の副作用として潰瘍部位からの出血が発現した。ガルデルマによると,これは薬理作用に基づくというよりは,乾いたガーゼに皮膚が付着し,ガーゼを交換するときに出血した可能性があるという。十分に濡らしてからゆっくりとはがすなど,使用法の工夫で回避できると見られる。

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▷効能・効果
がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減

▷用法・用量
症状及び病巣の広さに応じて適量を使用する。潰瘍面を清拭後,1日1〜2回ガーゼ等にのばして貼付するか,患部に直接塗布しその上をガーゼ等で保護する。

▷薬価
0.75%1g 101.40円

(佐賀 健)

MEDICAMENT NEWS 第2215号 12月5日