書籍
呼吸器・感染症
※最寄りの書店でのご注文の他に、弊社へ直接お電話・FAXによるご注文も承っております。
好評を博した『症例からせまる呼吸器病学』の第二弾がついに刊行! プレゼンテーションとディスカッションを上下に対応させることで、カンファレンスに参加しているような臨場感を体験できるスタイル。主訴や既往歴、現病歴、身体所見などをもとに鑑別診断を列挙し、さらに確定診断を導く決め手となる検査結果などを示す。診断過程を学べる全22症例を掲載。
発行 2014年04月30日
定価 本体 3,500円+税
判型 A4 195頁
ISBN 978-4-89801-479-0
編集を代表して
うふいち会会長 医療法人社団洛和会総長 松村理司
本書は、呼吸器臨床、わけても診断推論に興味が深い有志で結成された「うふいち会」による症例検討会の記録集である。 「うふいち会」とは沖縄の方言で、「深呼吸」という意味である。このことからもわかるように「うふいち会」は、沖縄県立中部病院に長く勤められ、現在は群星沖縄臨床研修センター長である宮城征四郎先生を中心に、直接教えを受けたり、その臨床スタイルに興味をもつ医師たちによって構成されている。
症例検討会といっても、日本呼吸器学会の学術講演会の日程に合わせて年に1回だけ開かれているものであるが、東日本大震災による2011年の中止をはさみ、今年で第30回目を迎えることになった。本書は、うち第20回より第29回までの症例検討会の記録(Progress in Medicine収載)をまとめたものであり、『症例からせまる呼吸器病学』(2003年刊)の続編になる。 過去約50年に及ぶ欧米のいくつかの調査によると、病歴のみ基づく診断と最終診断との一致率は、56~82%である。また、病歴に身体所見を加味した診断と最終診断との一致率は、73~91%とさらに高くなる。1963年と1992年に信頼できる調査が1つずつあるが、この一致率がなんと同じ88%になっている。
その30年間に、医学の専門分化が世界的な広がりで展開されたというのに、CTやMRIなどの高度画像検査や斬新な種々の血液検査が診断に寄与する割合が意外と低いことが驚かされる。 これは呼吸器臨床に妥当すると考えられるので、「うふいち会」でも、病歴と身体所見をことのほか重視している。 ところで、診断推論法にはいくつか(仮説演繹法、徹底的検討法、アルゴリズム法、パターン認識による一発診断など)あり、分析的な思考様式から非分析的なものまでが含まれる。そしてどの思考様式のものでも、可能性のある病気やその順位(鑑別診断・診断仮説)がどのようにして医師の頭脳に思い浮かぶかについては、最新の認知心理学研究成果を利用してもいまだによくわからないのである。直感のようなものも大きく作用する。しかし、診断の名医の近くに列席すると、その直感も含めて、病歴や身体所見といった基礎的臨床情報からの診断推論の息吹きをまざまざと感じ取れるものである。症例検討会参加の喜びの1つであろう。 と大上段に構えても、「うふいち会」がそれほど組織的に運営されているわけではない。ぶっつけ本番に近いし、老若男女が混じり合うし、お互いの出自や臨床的実力が必ずしもわからない。
いろいろな制約はつきまとうが、ともあれ本書が読み物として興趣あるものに出来上っていれば、誠に幸いである。
序文 | |
過敏性肺炎治療中、結核菌の排菌と発熱の持続を認めた1例 | 公立陶生病院呼吸器・アレルギー内科 近藤 康博 |
ステロイド内服患者に発症した急性呼吸不全の1例 | 沖縄県立中部病院呼吸器内科 玉城 仁 |
次第に増殖する呼吸困難で受診し胸部画像所見が乏しかった1例 | 浦添総合病院呼吸器センター 兼島 洋 |
中年主婦に発症した急性呼吸不全の1例 | 市立舞鶴市民病院内科 松村 理司 |
急性呼吸不全を呈したびまん性肺炎疾患の1例 | 高松市民病院呼吸器科 岸本 伸人 |
6カ月にわたる発熱、咳嗽、労作時呼吸困難を主訴に受診した1例 | 神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科 小倉 高志 |
呼吸困難で救急外来を訪れた67歳、女性の1例 | 岩手医科大学第三内科 高橋 格 |
治療に難渋した喘息に原因不明の関節痛と発熱を併発した1例 | 金沢医科大学呼吸器機能治療学 井口 晶晴 |
58歳、女性、発熱、皮膚、低酸素血症、代謝アシドーシスを示した1例 | 東海大学医学部付属病院総合内科 柳 秀高 |
労作時息切れを主訴に来院した52歳、女性の1例 | 昭和大学藤が丘病院呼吸器内科 蓮本 誠 |
両肺の間質性陰影を来し、急速に呼吸状態の悪化した1例 | 洛和会音羽病院呼吸器科 土谷美知子 |
急性の労作時呼吸困難を認め、胸部X線にて多発浸潤影を呈した1例 | 三豊総合病院内科 南木 伸基 |
発熱、筋痛、両側胸部異常を認め呼吸不全を呈した1例 | 独立行政法人国立病院機構東京病院呼吸器科 鈴木 純子 |
発熱と筋肉痛による歩行困難を訴えて来院した54歳、男性の1例 | 聖路加国際病院呼吸器内科 堀之内秀仁 |
筋肉痛、労作時息切れ、眼痛、咳、痰を認めた1例 | 洛和会音羽病院総合診療科 大岩 寛 |
微熱、頭痛を契機に両側のびまん性陰影を指摘された1例 | 国立病院機構東京病院呼吸器科 山戸 梓 |
体重減少、食欲不振を認め、胸部異常影を呈した1例 | 沖縄県立中部病院呼吸器内科 野山 麻紀 |
繰り返す発熱、右胸痛にて来院した29歳男性の1例 | 昭和大学藤が丘病院呼吸器内科 若林 綾 |
3週間続く発熱および胸部X線写真上BHLを呈した1例 | 神戸市立医療センター中央市民病院呼吸器内科 大塚今日子 |
胃全摘・脾摘の既往があり発熱・湿性咳嗽で来院した1例 | 自治医科大学呼吸器内科 中曽根悦子 |
経過中に著明な低酸素血症を繰り返した1例 | 高松市民病院呼吸器科 岸本 伸人 |
急速に進行する呼吸困難と両肺野すりガラス影を呈した1例 | 埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科 石黒 卓 |
20年にわたって発熱・皮疹が間欠的に出現した1例 | 岡山大学病院血液・腫瘍・呼吸器・アレルギー内科 谷本 安 |
1年前からの労作時呼吸困難を主訴とし、右上葉の容積減少を認めた1例 | 神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科 松尾 規和 |
索引 |