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ISBN 978-4-89801--
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老年科医のひとりごと 第44回

老化と病気

井口 昭久
愛知淑徳大学健康医療科学部教授

 テレビ局の技術職員であった81歳の畑中さんは軽い糖尿病と高尿酸血症の患者である.60歳で定年になったが,そこからテニスを始めた.私の外来に通院するようになって13年が経つ.70歳のときに前立腺癌を発症して手術を受けた.いまでも毎週1回はゴルフとテニスを続けている.
 加藤さんも糖尿病患者である.港湾会社の重役を68歳で定年になってから私の外来に通院するようになった.その頃からテニスを始め今は81歳である.70歳のときに前立腺癌の手術をしており,75歳で胃癌の手術を受けた.今もテニスを続けている.
 2人とも病気を克服して80歳を超えた.
 私は63歳のときに国立大学を定年になり,今の診療所で彼らに出会った.私も68歳のときに前立腺癌になり,69歳で食道癌になった.どちらも放射線と化学療法で緩解となりすでに7年目を迎えた.
 3人はともに癌に罹患しながら年老いてきた.
 現在ではわれわれのように死ぬ運命であった者でも生き残ることができる老化と病気(W210)ようになった.文明の発達のおかげである.
 「老化は病気か?」という議論があった. ヒトが老化を迎える前に死んでいた時代には老化とは病気に他ならなかった.老化は病気によってもたらされると考えていた.
 しかし近代になって病気でない老人が大量に出現するようになってくると,病気をもたなくても老化が進んでいくことを知ることになった.
 そのことによって生理的老化の概念が生まれたのである.私は最近視力が落ちて昼間に訳もなく眠くなる.
 私が診ている2人の患者もテニスをすると息切れがすると言っている.
 3人は病気とは別に老化が進んでいることを実感している.われわれは死ななかったので生理的な老化を経験する羽目になったのである.

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